大学の給与業務は非常に複雑で面倒なものです。正規雇用、非正規雇用の中で多くの雇用形態があることや多様な働き方が認められていることから発生する煩雑さですが、大学で給与業務を担当していたからこそ役立った経験もあります!
そこで今回は、給与業務から学んだことや培った視野、そして派生して携わったことから得た経験などをご紹介させていただきます。
ちなみに、給与業務の大変さを語った記事はこちらです。半分愚痴ですが、リアルな苦悩をご覧いただけるかと思います。
予算感覚、お金の流れを把握できる
これが私の中では最も大きいです。大学は予算主義なので、年度に立てた予算の中で教育活動を実施していきます。よほど突発的なものでない限りは、予算折衝で1年の流れが決まりますので、それなりにわかりやすい世界です。入学式からはじまって前期後期の授業、途中で留学やシンポジウムなどあったりしますが、大体毎年のことですよね。つまり、予算を立てる段階で1年の流れがおおまかにわかるという訳です。
予算から大学の方向性を見る
私の大学がそこまで大きい規模ではないからかもしれませんが、給与業務をやっているということで、人件費分析も任されています。予算は前年の10月ころから作り始めますが、ある程度の紆余曲折を経ながら決まっていきます。当然、中長期計画や中期目標といったものを主眼に入れつつ作成する訳ですが、時に、トップの思い付き英断において予期せぬお金が必要になることがあります。たとえば、新しい部会を設けるとか右腕的存在を招へいするとかという話になると、追加で人件費が発生することになるので、人事で試算して予算案に盛り込むことになるのです。
ここから最新の大学の方向性を知ることができるのは法人で働く上で、非常に重要なことです。信頼のおける関係各所の仲間に情報提供することもあるでしょうし、どう考えても無理そうな少し厳しいプランであれば、反証を探したり、他大学の失敗例を挙げて対策を練ることもできます。ここは事務局が一致団結して、トップとしっかり方向性を定めていく大事な局面となります。
予算感覚(金銭感覚)を培う
いわば大学職員としての金銭感覚を学ぶということですね。とても生意気なことを申し上げると、ちゃんとした金銭感覚を持っている職員って意外と少ないように思うのです。ひと昔前まではジャブジャブお金を使うこともできましたし、それが「学生のためなんだ」という大義名分の前には無条件降伏状態だったこともあったでしょう。しかし今は違います。きちんとした使い道で予算どおりにお金を支出し、不明瞭な使途は許されません。
こと、人件費はシビアな話です。
「人足りない?じゃあ派遣入れればいいじゃん。」
「社会人バイトで賄えばいいんだよ、そんな仕事。」
これじゃあまずいですよね。慎重審議した結果の上記発言であればまだわかりますが。。。
お金の使い道に関しては、人件費以外にも言えることではありますが、我々職員がもっとも身近なのは人件費です。いずれマネジメントの役職を担おうと考えているのならば、労務管理や課の予算権をきっちり守るのは役職者として当然の責務となります。またしても生意気な話ですが、それが、じゃあ明日から身につくか、といえばそんなことはないはずです。これも給与業務をやっているからこそ、大きな金額に麻痺することなく、現実を直視する良い経験になっていると実感します。
まだ役職につくには当分時間がありますがWWW
社会保険、年金などの仕組みがわかる
話は少し変わりますが、これも給与業務を行うと知らなくてはならないことになりますね。裏を返せば、とても面倒なこれらの社会的な仕組みを仕事として行いますので、公的に勉強することができます。私の場合は勉強が好きなこともあって、とても楽しく知識を習得することができました。
社会保険とは?
我々私学で働く人は日本私立学校振興・共済事業団(以下、「私学事業団」)に加入しています。そして、社会保険とは健康保険、介護保険と厚生年金のことを指しています。広義の意味ではここに労働保険、すなわち労災保険と雇用保険も含まれます(こちらは私学事業団関係なし)。毎月よくわからないままにそれなりの額が控除されてますよねWWW
実はそれぞれに意味があって、社会保険という名称からもわかるように、困った人をみんなの出し合ったお金で助けてあげる制度になっているというのが基本的な考えです。これらは有事の際に非常にありがたい制度です。基本的には何かあった時には人事課に申し出ると思いますので、そこで教えてもらえると思いますが、せっかく仕事内容の解説を書いているのでひとつお得なものをご紹介させていただきます。
ズバリ、雇用保険の「教育訓練給付」です。正社員の方であれば、必ず雇用保険に入っているはずのですので、利用が可能です。心配な方は人事に問い合わせてみてください。簡単に言えば、働いている人が能力アップのために受ける費用の一部を負担してくれるという仕組みです。わかりやすいのは、資格の学校などの授業で本務に役立つ資格を取得するなど、ですかね。詳細は下記のリンクからハローワークのホームページをご覧いただければと思います。
年金とは?
最近「2000万円問題」が話題になっていますねWWW
そう、その年金です。ざっくり言えば、年金は全日本国民が加入する「国民年金」と働いている人が加入している「厚生年金」の2種類があります。3F部分の廃止によって、少しお得感は減ってしまいました。もっと言及すると、おそらくこれからも厚生年金の統一化は図られていくように感じます。就業人口が少なくなっていくなかで、それぞれ厚生年金だ共済年金だという、いわゆる2F部分が業種によって分かれていても安定的な運用はできないだろうという見方です。ここに関してはこれまで私学事業団にあったお得感は減っていくと見ても良いと私は考えています。
少し余計な話もしましたが、年金は普通に働いているとどうしても、ただただ納めているという感覚になってしまいますよね。もし興味があれば人事の担当者に聞いてみることをオススメします。加入しないということはできないのですから、どうせ払っているのなら、意味を理解して払いたいですよね。
業務と直結した資格がある
これも地味にモチベーションにつながるのではないでしょうか。社会保険労務士や年金アドバイザーといった資格がありますので、長年人事の経験がある方などは、これまで自分が行ってきた仕事の裏打ちとも言えるものとして取得を目指しても面白いと思います。また、人事業務は大学だけの仕事ではありませんので、仮に転職を考えている場合でも有用ですよね。
しかし自分で書いておいてなんですが、大学職員に転職したい人の話は良く聞きますが、逆はどうなんでしょうね。私の周りでは、教員に転身した人と実家を継いだ人しかいません。あまり民間企業に行こうという人もいないのでしょうか。
・おわりに
いかがでしたでしょうか。冒頭でご紹介した中で、給与業務について相当な愚痴を言ってしまいましたので、フォローという形ではありませんが、給与業務をやってて良かったと思えることをまとめてみました。
私自身不意に人事課に異動となり、いきなり給与業務を任されるなど相当しんどい思いをしましたが、今では人件費分析に携わり、まさに法人の中核ともいえる業務を行っていることに誇りを感じています。さらには、社会保険や年金などちょっと複雑で嫌だなと思ってしまうようなものにも耐性がつき、まだまだ勉強の日々ながらとても楽しい職員ライフを過ごせています。
以上、独断と偏見バリバリの主観で「給与業務をやっていて良かったこと」について物申してみました。